防衛省が発表した令和8年度(2026年度)概算要求は総額約8兆8千億円規模。2022年以前の5兆円規模から大幅に拡大し、特に無人アセット防衛能力(前年比約3倍)と施設の強靭化(1兆円以上)が重点分野となっています。
この記事では、防衛予算の推移・無人アセット多層沿岸防衛体制「SHIELD」・スタンドオフ防衛能力・主要装備品の調達数など、令和8年度概算要求の注目ポイントを整理します。
結論:無人化・施設強靭化・スタンドオフが3大重点
- 概算要求総額 約8兆8千億円、2022年から約1.8倍に拡大
- 無人アセット防衛能力に3,128億円(前年比約3倍)
- 令和9年度中に無人アセット多層沿岸防衛体制「SHIELD」を構築
- 施設強靭化に1兆円以上(司令部地下化・駐機パッド分散化など)
- 沖縄の第15旅団を第15師団へ改編、特殊作戦団(仮称)新編
- F-35A 8機・F-35B 3機・新型FFM・潜水艦「たいげい」型1隻などを取得
日本の防衛予算の推移
概算要求とは、来年度に防衛省・自衛隊に必要な予算をまとめて財務省に提出する予算の見積もりです。新装備導入・部隊改編・研究開発などがプロジェクトごとに公表され、国民にとっては国の予算の使途を知る重要な資料となります。
| 年度 | 予算規模 |
|---|---|
| 2022年以前 | 約5兆円 |
| 2023年度 | 約6兆8,000億円(1兆円以上増額) |
| 2024年度 | 約7兆9,000億円 |
| 2025年度 | 約8兆7,000億円 |
| 令和8年度(2026)概算要求 | 約8兆8,000億円 |

2022年に決定された「国家防衛戦略」「国家防衛力整備計画」に基づき、2023年から5年間で43.5兆円を投じて防衛能力を抜本的に強化する方針が反映されています。

無人アセット多層沿岸防衛体制「SHIELD」
令和8年度予算で特に大きく増えたのが無人アセット防衛能力(3,128億円、前年比約3倍)です。このなかで1,287億円をかけて多層沿岸防衛体制「SHIELD」を令和9年度中に構築すると発表されました。

陸海空自衛隊で3種類の無人機を活用した防衛体制を構築します。
- UAV(無人航空機):空中の無人機
- USV(無人水上艇):水上の無人艇
- UUV(無人潜水艇):水中の無人艇
陸上自衛隊が取得するUAV
- UAV Ⅰ型:近距離、車両等が目標(直接攻撃可)
- UAV Ⅱ型:中距離、敵艦艇等が目標
- UAV Ⅲ型:遠距離、敵艦艇等が目標
- 情報収集用のFPVタイプのモジュール型UAV

海上自衛隊が取得するUAV
- 水上艦発射型UAV:艦艇から発射、敵艦艇等を攻撃
- 艦載型UAV(小型):情報収集・警戒監視+敵艦艇攻撃可

航空自衛隊が取得するUAV
- 艦艇攻撃用UAV:長距離飛行、敵艦艇等を攻撃
- レーダーサイト防衛用UAV:敵UAVからレーダーサイトを守る

USV・UUV
- 陸自・海自:敵艦艇攻撃等のためのUSV
- 陸自:敵艦艇情報収集のためのUUV
- 多数の無人アセットの同時管制を行う実証試験に23億円

ISRT強化とMQ-9Bシーガーディアン取得
SHIELD以外にも、ISRT(情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング)機能強化としてUAV(広域用)5セットを111億円で取得。水上艦艇等を遠距離から早期探知し、指揮官の状況判断・火力発揮に必要な情報を収集します。


これとは別に、滞空型UAVとしてMQ-9B(シーガーディアン)取得等に770億円が計上されています。

筆者はこのISRT用UAVがMQ-9Bかと思いましたが、別枠で記載があるため異なる可能性があります。2025年8月に中谷防衛大臣がトルコを訪問し、無人機メーカーのバイカル社を視察した報道もあり、トルコ製バイラクタルTB2の可能性もありそうです。

その他、狭域用UAVに89億円で1,000機近い小型ドローンの取得、水陸両用作戦向けの水際障害探知UAV取得、AI搭載の地上走行型UGV研究、次期戦闘機連携無人機の研究開発などにも予算が配分されています。
スタンドオフ防衛能力と宇宙・電子戦
スタンドオフミサイルの量産化
敵の対空ミサイル射程外から発射可能なスタンドオフミサイルの導入が進んでいます。
- 極超音速誘導弾:開発中、量産化に向けた予算
- 令和8年度から 12式地対艦誘導弾能力向上型 と 島嶼防衛用高速滑空弾 が部隊配備予定



宇宙領域:航空宇宙自衛隊への改編
航空自衛隊は「航空宇宙自衛隊」に改編され、宇宙作戦集団が設立されます。SDA(宇宙領域把握)能力強化のため、人工衛星に対する電磁妨害状況を把握する装置に12億円が充てられます。

防空強化とメガワット級レーザー
- ペトリオットミサイル改修:79億円
- 03式中距離地対空誘導弾への弾道ミサイル対処能力付与:51億円
- メガワット級レーザーシステム実現のための技術研究:10億円(現行ドローン対処レーザーの10倍以上の出力)

電子戦:24式対空電子戦装置の本格運用
陸上自衛隊は24式対空電子戦装置を配備した部隊を新編し、敵の早期警戒管制機などに対する電子妨害・レーダー無力化を本格運用します。

部隊改編と人員の課題
沖縄の第15旅団を第15師団へ改編
南西地域防衛強化のため、沖縄に所在する第15旅団に新たに1個普通科連隊等を新編し、第15師団へ改編する予定です。
ただし陸自定員は増員計画がなく、令和8年度末にはマイナス281人と公表されています。この部隊新編のための人材は本土の普通科部隊から集めることになると予想され、人員を差し出す側の部隊の業務量逼迫が懸念されます。


特殊作戦団(仮称)の新編
特殊作戦能力を強化するため、陸自特殊部隊の特殊作戦群と、海外派遣での先遣任務にあたる中央即応連隊を一体で運用する方針で、「特殊作戦団(仮称)」が新編されます。
施設の強靭化に1兆円以上
令和8年度予算では施設強靭化が前年度から大幅増額され、1兆円以上が投入されます。
- 老朽化建物の建て替え・耐震化・再配置・集約化:約5,365億円
- 敵の直接攻撃や電子パルス攻撃に備えた主要司令部の地下化
- 戦闘機駐機パッドの分散化
- 部隊新編・新装備品導入に伴う新施設整備:4,107億円
- 駐屯地・基地警備向けドローン対処機材の導入に102億円

主要装備品の調達数
陸上自衛隊
- 共通戦術装輪車:24式機動120mm迫撃砲 8両、25式偵察警戒車 18両
- 10式戦車:8両
- AMV:23両(計50両超の装甲車両)
- UH-2 新型多用途ヘリ:8機で372億円
- 20式小銃:57億円(陸自1万丁、海自205丁、空自2,946丁)


海上自衛隊
- 新型FFM:1隻 1,048億円
- 哨戒艦:2隻 287億円
- 「たいげい」型潜水艦:1隻 1,199億円
- いずも型護衛艦のF-35B運用化改修:287億円
- P-1哨戒機:1機 473億円
- SH-60K哨戒ヘリ:3機 449億円
航空自衛隊
- F-35A:8機 1,525億円
- F-35B:3機 730億円
- 新田原基地の臨時F-35B飛行隊は廃止、正式に第202飛行隊となる予定
- KC-46A 空中給油輸送機:2機 912億円
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まとめ
- 令和8年度概算要求は約8兆8千億円、過去最大規模
- 無人アセット防衛能力は前年比約3倍の3,128億円
- 令和9年度中に多層沿岸防衛体制「SHIELD」を構築
- スタンドオフミサイル量産化、航空宇宙自衛隊改編、メガワット級レーザー研究
- 施設強靭化に1兆円以上、司令部地下化・駐機パッド分散化
- 沖縄の第15旅団を師団化、特殊作戦団新編、ただし陸自定員はマイナス
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