公務員として採用された際に行われる「服務の宣誓」。法令を守り誠実に職務を遂行することを誓う、いわば公務員としての覚悟を示す手続きです。なかでも自衛官の宣誓には「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め…」という、命を懸ける覚悟が明文化されているのが大きな特徴です。
この記事では、自衛官の服務の宣誓文を立場別(一般/候補生/予備/学生/幹部)に紹介し、警察官・消防・国家公務員・地方公務員の宣誓と比較。さらに「国会議員に服務の宣誓はあるのか?」という素朴な疑問にも答えます。

結論:自衛官だけが「危険を顧みず」と明文で誓う
- 自衛官の宣誓には「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め」と明記
- 他の公務員(警察・消防・地方・国家)にはここまで自己犠牲を明文化した宣誓はほぼない
- 自衛官の宣誓は立場(一般/候補生/予備/学生/幹部)ごとに文面が異なる
- 警察・消防・地方公務員は憲法尊重・公平中立・誠実執行が中心
- 国会議員には服務の宣誓制度がない(選挙で選ばれる立場のため)
自衛官の服務の宣誓(一般)
自衛官として採用されたとき、最初に行うのが「服務の宣誓」です。自衛隊法施行規則 第39条に基づく正式な手続きで、宣誓文を記載した宣誓書に署名押印します。
宣誓 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもって専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います。
特に注目すべきは「危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努める」という一節。これは他の公務員の誓いではまず見られない、自衛官だけが持つ「命をかけて国を守る覚悟」を象徴する言葉です。

服務の宣誓は通常、教育隊に入った段階で行います。宣誓書に署名押印したのち、入隊式などの公式行事でも改めて宣誓。さらに筆者の経験では、新隊員教育期間の6か月間は朝礼で代表者が前に出て全員で宣誓文を読み上げるのが日課でした。
立場別 自衛官の服務の宣誓文
自衛官の服務の宣誓は、立場や採用区分によって文面が異なります。
自衛官候補生
自衛官候補生として入隊した場合、最初の3か月間の宣誓文です。
宣誓 私は、自衛官候補生たるの名誉と責任を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、知識をかん養し、政治的活動に関与せず、専心自衛官として必要な知識及び技能の修得に励むことを誓います。
「危険を顧みず」の表現はなく、「学びと成長に専念する姿勢」を示す内容です。なお自衛官候補生という採用区分は2025年で廃止予定で、2026年度からは自衛官として採用する「任期制士」制度へ移行するため、この宣誓文も使われなくなる可能性があります。
予備自衛官/即応予備自衛官
普段は民間で働き、訓練に参加し、有事の招集に応じる非常勤の自衛官です。
予備自衛官の宣誓文:
宣誓 私は、予備自衛官たるの責務を自覚し、常に徳操を養い、心身を鍛え、訓練招集に応じては専心訓練に励み、防衛招集、国民保護等招集及び災害招集に応じては自衛官として責務の完遂に努めることを誓います。
即応予備自衛官の宣誓文:
私は、即応予備自衛官たるの責務を自覚し、常に徳操を養い、心身をきたえ、訓練招集に応じては専心訓練に励み、防衛招集、国民保護等招集、治安招集及び災害等招集に応じては自衛官として責務の完遂に努めることを誓います。
2つの違いは「治安招集」の有無のみ。実際の役割は予備自衛官が年間5日訓練の後方支援、即応予備自衛官は年間30日訓練で有事には現職と同様に第一線配置です。
防衛大学校・防衛医科大学校・高等工科学校
私は、防衛大学校学生(防衛医科大学校学生又は陸上自衛隊高等工科学校生徒)たるの名誉と責任を自覚し、日本国憲法、法令及び校則を遵守し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、知識をかん養し、政治的活動に関与せず、全力を尽して学業に励むことを誓います。
「校則」「学業に励む」など、学生としての本分が中心です。
幹部自衛官に昇任時
自衛隊法施行規則 第42条に基づき、幹部自衛官に昇任した者は次の宣誓も行います。
私は、幹部自衛官に任命されたことを光栄とし、重責を自覚し、幹部自衛官たるの徳操のかん養と技能の修練に努め、率先垂範職務の遂行にあたり、もって部隊団結の核心となることを誓います。
幹部としての自覚・模範・部隊を率いる責任といったリーダーシップを意識した内容です。幹部候補生として入隊した者は、最初の一般宣誓と合わせてこの幹部自衛官宣誓を行います。
他の公務員の服務の宣誓
一般職の国家公務員
国家公務員法第97条により服務の宣誓が義務付けられています。
私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。
法令遵守・誠実な職務遂行・中立性が中心。「危険を顧みず」のような自己犠牲の表現は含まれていません。
地方公務員
地方公務員法第31条に基づき、各自治体の条例で定められます。多くは2文構成で、1文目が憲法尊重・擁護、2文目が誠実・公正な職務遂行です。三重県の例を紹介します。
私は、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、かつ、擁護することを固く誓います。私は、地方自治の本旨を体するとともに、公務を民主的かつ能率的に運営すべき責務を深く自覚し、全体の奉仕者として一部に偏することなく、誠実かつ公正に職務を執行することを固く誓います。
消防職員
大阪府豊中市の消防職員宣誓文の例です。
私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、かつ、これを擁護することを固く誓います。私は、消防の目的及び任務を深く自覚し、消防の職務に優先して従うことを要求する団体又は組織に加入せず、全体の奉仕者として誠実かつ公正に消防の職務を執行することを固く誓います。
消防職も現場で危険と隣り合わせですが、宣誓文の主眼は公務遂行への責任感と忠実性です。
警察官
警察法第3条に基づく宣誓文。中立性・倫理遵守が強く求められます。
私は、日本国憲法及び法律を忠実に擁護し、命令を遵守し、警察職務に優先してその規律に従うべきことを要求する団体又は組織に加入せず、何ものにもとらわれず、何ものをも恐れず、何ものをも憎まず、良心のみに従い、不偏不党かつ公平中正に警察職務の遂行に当たることを固く誓います。
職種別の宣誓比較表
| 職種 | 根拠法令 | 特徴的な要素 |
|---|---|---|
| 自衛官(一般) | 自衛隊法施行規則 第39条 | 危険を顧みず/身をもって責務の完遂 |
| 幹部自衛官 | 自衛隊法施行規則 第42条 | 部隊団結の核心、率先垂範 |
| 国家公務員 | 国家公務員法 第97条 | 不偏不党・公正 |
| 地方公務員 | 地方公務員法 第31条 | 憲法尊重+誠実公平 |
| 警察官 | 警察法 第3条 | 何ものにも恐れず・良心のみに従い |
| 消防職員 | 各自治体条例 | 誠実・公正な職務執行 |
| 国会議員 | 該当なし | 選挙が正当性の根拠 |

国会議員に「服務の宣誓」はあるのか
結論からいうと、国会議員には自衛官や他の公務員のような「服務の宣誓」は定められていません。
- 国家公務員法・地方公務員法には宣誓義務がある
- 自衛隊法施行規則・警察法・消防関係条例にも宣誓規定あり
- 一方、国会法・憲法・議院規則には服務の宣誓に関する規定が存在しない
- 議員は選挙によって国民から直接選ばれる存在のため、選挙結果そのものが正当性の証

とはいえ国会議員が自由に振る舞ってよいわけではありません。国会法や両院規則には品位保持義務・守秘義務・懲罰規定など倫理的・法的な枠組みがあり、職責の重さは当然伴います。
「服務の宣誓」という形式を通じた覚悟の明文化がない、という点で他の職種と異なるだけのことです。
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まとめ
- 自衛官の宣誓には「事に臨んでは危険を顧みず」という命を懸ける覚悟が明文化
- 立場(候補生・予備・学生・幹部)ごとに宣誓文が異なる
- 警察・消防・地方・国家公務員は憲法尊重・公平中立・誠実執行が中心
- 警察官の宣誓は「何ものにもとらわれず」など中立性の表現が独特
- 国会議員には服務の宣誓制度が存在しない(選挙が正当性の根拠)
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