2026年5月、防衛装備庁は自衛隊史上初となる攻撃用ドローン「小型攻撃用UAV I型」の調達を正式に発表しました。採用されたのはオーストラリアDefendTex社のDrone40。重さわずか200g、手のひらサイズの機体でありながら、装甲車両を無力化する能力を持つ徘徊弾薬です。この記事では、Drone40の性能・10種類のペイロード・各国での実戦評価・陸自への影響まで詳しく解説します。

Drone40の基本スペック──200gに詰まった多機能性
Drone40は、収納時の直径わずか40mmの円筒形ドローンです。4本のローターアームを展開してクアッドコプターとして飛行します。
DefendTex社の最新カタログ(V12データシート)に基づく主要スペックは以下の通りです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 重量 | 200g |
| 最大離陸重量 | 400g |
| 直径 | 40mm(収納時) |
| 全長 | 132mm+ペイロード |
| 最大飛行時間 | 60分 |
| 最大航続距離 | 35km |
| 最大速度 | 時速72km(秒速20m) |
| 映像送信 | 暗号化1080p / 30fps |
| 連携運用 | スウォーム機能(MSRI) |
運用方法は主に2通りあります。手持ちで直接離陸させるか、NATOの標準規格である40mmグレネードランチャーから射出するかです。旧式のM203では弾体の長さから装填できず、M320など新型ランチャーが必要です。

注目すべきは、陸上自衛隊が20式小銃と組み合わせてベレッタGLX 160 A1(40x46mm規格)を採用していること。Drone40を射出できるインフラがすでに整いつつある可能性があります。
40mmてき弾-1024x682.jpeg)
10種類のペイロード──偵察から攻撃、煙幕まで1機で対応
Drone40最大の特徴は、モジュール式のペイロードです。本体と弾薬部が分離でき、任務に応じて現場で付け替えられます。

偵察系ペイロード
| 名称 | 機能 |
|---|---|
| ISR EO | 高解像度センサー、暗号化1080p映像をリアルタイム送信 |
| ISR TI | 赤外線画像センサー、昼夜問わず監視可能 |
攻撃系ペイロード
| 名称 | 機能 |
|---|---|
| FRAG | 鋼球ベアリングによる指向性破片弾頭、近接信管付き、有効半径100m |
| EFP(自己鍛造弾) | 均質圧延鋼板(RHA)16mmを貫通、軽装甲車両の上面攻撃に有効 |
支援系ペイロード
| 名称 | 機能 |
|---|---|
| FLASHBANG | 170デシベルの音響+500万カンデラの閃光 |
| SMOKE | 発煙弾 |
| EO STREETLIGHT | 可視光ライト(100m照射) |
| IR STREETLIGHT | 赤外線ライト |
| TRAINING EFFECTOR | 訓練用 |
1つのプラットフォームで偵察から攻撃、煙幕展開、夜間照明まで対応できる多機能性が、他の徘徊弾薬にはないDrone40の独自の強みです。
さらにDefendTexはスウォーム能力としてMSRI(Multiple Simultaneous Round Impact)を開発しています。1人の兵士が複数のDrone40を発射・空中待機させた後、指令で全機が同時に目標へ突入する運用方式です。
なぜ自衛隊は今、攻撃ドローンを導入するのか
きっかけは2022年のウクライナ侵攻です。安価なFPVドローンが高額な戦車を次々と破壊する映像は、世界各国の軍に衝撃を与えました。
日本政府は2022年12月の「国家防衛戦略」で「無人アセット防衛能力の抜本的強化」を明記。防衛装備庁は2023年7月から企業への情報提供要求を開始し、「小型攻撃用UAV」の導入準備を進めてきました。

この小型攻撃用UAVには3つの型が設定されています。
| 型 | 用途 | 想定目標 |
|---|---|---|
| I型 | 歩兵携行・近距離 | 車両など |
| II型 | 中型・中距離 | 軽装甲車両、小型舟艇 |
| III型 | 車載・大型 | 艦艇 |
今回調達が決まったのはI型です。2026年2月17日の入札には丸紅エアロスペース1社のみが参加し、DefendTex社のDrone40が単独落札しました。実証試験には計7機種が参加しており、うち5機種がイスラエル製でしたが、最終入札には参加していません。
契約額は約36.8億円、数量は約310機、納入期限は2027年5月末です。
各国の採用状況とウクライナでの実戦評価
各国の採用・運用実績
| 国 | 状況 |
|---|---|
| オーストラリア | 政府が開発資金を支出。豪軍自体は量産配備に至らず |
| イギリス | マリへの国連PKO派遣(MINUSMA)で実運用。ただし偵察用途に限定 |
| アメリカ | 海兵隊が2021年に試験運用。Switchbladeと並行テストしたが正式採用には至らず |
| ウクライナ | 2022年8月頃にオーストラリアから約300機を受領 |
ウクライナでの評価
約300機が供与されたウクライナでは、Drone40の具体的な戦果は公開情報でほとんど確認できていません。FPVドローンの使用映像が大量に流通する中で、Drone40の実戦映像は極めて少ないのが現実です。
主な要因として以下が考えられます。
- コスト構造の不利: 500ドル程度のFPVドローンが数百万機規模で調達される環境では、高機能な西側製品はコスト面で劣勢
- 電子戦への脆弱性: Drone40はGPSベースの自律飛行で運用するため、ロシア軍の激しい電波妨害環境では根本的に不利
- 投入数の少なさ: 約300機という数量では「量の主役」にはなり得ない
ただし、これでDrone40の価値が否定されるわけではありません。FPVドローンの代替ではなく、歩兵が自前で偵察と限定的な打撃能力を持てることに本質的な強みがあります。
普通科部隊はどう変わるか
「依頼して待つ」から「自分で飛ばして撃つ」へ
従来の普通科部隊でも偵察や火力支援の手段はあります。連隊の情報小隊や、中隊の斥候が情報を取り、重迫撃砲中隊や迫撃砲小隊、配属された特科部隊が火力支援を行います。しかし小隊長・分隊長の視点では、これらはすべて「依頼して、待つ」プロセスでした。
Drone40が配備されると、分隊長や小隊長レベルで探知・識別・打撃というキルチェーンを自己完結できるようになります。これは普通科にとって革命的な変化です。
編制はどうなる?(※独断と偏見の個人的意見です)
当面は中隊直轄か小隊直轄のUAV班として数名の専任要員を置き、周囲に兼務で使える隊員を育てる形が現実的だと思います。3機連携運用やペイロード換装、安全管理まで含めると、全隊員に均一のスキルを求めるのは教育・訓練時間の確保など無理があります。

また偵察ペイロードでの運用では、敵の発見から火力要求を行う必要があるため、迫撃砲小隊の前進観測班(FO)との連携も重要になると考えられます。
310機の配備先は?
310機という数を冷静に見る必要があります。陸自の普通科連隊は45個以上あり、教育用・予備品・整備交換分を差し引くと、全部隊への配備は不可能です。初期配備は島嶼防衛を担う水陸機動団や、第1空挺団、即応機動連隊など機動展開力の高い部隊に重点配分されるでしょう。
今後、普通科部隊すべてに配備を目指すのか、一旦この機種のこの機数だけの配備なのか気になるところです。

コスト構造
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 契約総額 | 約36.8億円 |
| 数量 | 約310機 |
| 1機あたり | 約1,187万円 |
| 本体推定原価 | 数十万円程度 |
1機1,187万円と高額に見えますが、大半は初度費用(整備体制構築、操縦訓練システム、技術資料翻訳、商社経費など)だと思います。
弾薬なのか装備品なのか、これまで陸自が運用してきたものとは違い、新しく複雑なシステムではありますが、それにしても想像以上に高価すぎる装備品だと思うのは自分だけの感覚でしょうか?
今後の量産調達で単価をどこまで下げられるかが問われます。
関連記事



まとめ
- 自衛隊初の攻撃ドローンとして、オーストラリアDefendTex社のDrone40が採用決定。約310機、36.8億円、2027年5月末納入
- 重量200g、飛行時間60分、10種類のモジュール式ペイロードで偵察から攻撃まで対応可能
- ウクライナでは「量の主役」にはなれなかったが、歩兵レベルの偵察・打撃自己完結という価値は健在
- 陸自にとって重要なのは機体そのものではなく、運用思想の体得と教育訓練体制の構築
- 今後のII型・III型の本格調達と国産徘徊弾薬の開発に向けた第一歩


コメント