令和7年度(2025年)の日本の防衛予算は総額8兆7,005億円と過去最高を更新。2022年の「国家防衛戦略」に基づく5年間で43兆円の防衛力強化計画の3年目にあたり、装備品・施設整備に加えて自衛官の処遇改善に大きな予算が割り当てられているのが特徴です。
本記事では、過去5年の予算推移、日本全体予算における防衛費の位置付け、各国比較、そして元陸上自衛官として気になった処遇改善・新装備の予算配分を整理します。
結論:3年連続で大幅増額、処遇改善が大きな柱に
- 令和7年度防衛予算:8兆7,005億円(2024年12月27日閣議決定)
- 2022年5兆4,005億円から3年で1.6倍に拡大
- 5年間で防衛費を43兆円規模にする整備計画の3年目
- 日本全体予算の約7.5%を占める
- 自衛官処遇改善:航空管制官手当・野外演習手当などを新設
- 営内生活者向け指定場所生活調整金(最大120万円)を新設
日本の防衛予算の推移
2022年12月、岸田政権は「国家防衛戦略」を閣議決定し、2023年度から5年間で防衛費を1.6倍の43兆円規模に拡大する方針を打ち出しました。背景には中国・北朝鮮・ロシアなど周辺国の軍事力強化、ウクライナ侵略を踏まえた抑止力強化があります。
| 年度 | 予算規模 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 令和4年度(2022) | 5兆4,005億円 | +11.8% |
| 令和5年度(2023) | 6兆7,880億円 | +26%(GDP比1%超え) |
| 令和6年度(2024) | 7兆7,249億円 | +13.8% |
| 令和7年度(2025) | 8兆7,005億円 | +12.6% |

同時に閣議決定された「防衛力整備計画」では、5年間の具体的な装備取得・部隊編成・人材活用の計画が示されています。
日本全体予算の中での防衛費の位置付け
2025年度の日本全体予算は115兆5,415億円と過去最大規模。主な内訳は次の通りです。
| 項目 | 金額 | 全体比 |
|---|---|---|
| 社会保障関係費 | 約38兆2,778億円 | 33.1% |
| 国債費 | 28兆2,179億円 | 24.4% |
| 地方交付税公費金等 | 19兆784億円 | 16.5% |
| 防衛費 | 8兆6,691億円 | 7.5% |
| 公共事業費 | 6兆858億円 | 5.3% |
| 文教及び科学振興費 | 5兆5,496億円 | 4.8% |

2022年度予算では、公共事業費・文教科学振興費よりも防衛費は少なかったことを考えると、わずか3年での順位逆転がいかに大きな転換だったかがわかります。
各国の国防費との比較(2024年)
| 国 | 国防費(円換算) | 前年比 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 米国 | 約127兆円 | +10.8% | 5軍種展開、世界最大 |
| 中国 | 約34兆8,400億円 | +7.2% | 急速近代化、空母・極超音速ミサイル |
| ロシア | 約18兆円 | +68.2% | ウクライナ侵攻で急増 |
| ドイツ | 約11兆4,700億円 | +22.6% | 欧州防衛の要として再軍備 |
| 韓国 | 約6兆2,844億円 | +4.2% | 北朝鮮の脅威に対抗 |
米国の国防費は約127兆円で、日本全体の年間予算(115兆円)よりも多い金額です。為替変動はあるためあくまで参考値ですが、規模感の把握には役立ちます。

自衛官の処遇改善が大きな柱に
令和7年度予算で特筆すべきは自衛官の処遇改善です。任務の特殊性に応じた手当の新設・引き上げが多数盛り込まれています。
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新設される手当
- 航空管制官手当(仮称):1尉で月額32,000円(年額39万円)
- 航空機整備作業等手当(仮称):日額1,200円(対領空侵犯措置に対処する整備員向け)
- 野外演習手当(仮称):日額1,400円(主要な野外演習等に従事する隊員)
「主要な野外演習等」の「主要な」と「等」の部分が気になるところ。状況入りで支給か、訓練日数(4夜5日以上など)で支給か、基準の詳細はこれからになりそうです。陸自では演習が多い月や山にいる期間が長い時に給料を時給換算した経験のある人も多いのでは?
指定場所生活調整金(最大120万円)— 営内者向け
個人的に資料の中で一番注目したのが「不慣れな営舎内生活等への給付金」です。陸自であれば独身の陸士・2曹以下で30歳未満の隊員は駐屯地内で集団生活を送ります。この営内生活者に対し、「指定場所生活調整金(仮称)」を新設、最大120万円(採用日から6年間、1年経過ごとに20万円支給)するそうです。
営内経験者として、これは残留制度・古い隊舎設備・人間関係・勤務スケジュールなど一言では言い表せない面もあり、20万円のボーナスだけで退職者が減るとは思えないのが正直なところです。効率化や省人化が同時に進まないと根本解決は難しいでしょう。
引き上げられる手当
- 航空手当:戦闘機パイロット1尉で月額約25.7万円→28.9万円(年39万円増)
- 災害派遣等手当:日額1,620円→2,160円
- 自衛官任用一時金:現行+12万円増の約34万円(任期制隊員→2士任用時)
- 特殊作戦隊員手当:特戦群1尉で月額約15.9万円→20.9万円(5万円増)
- サイバー専門部隊にも特殊作戦隊員手当支給:1尉で月額約32,000円
- 落下傘隊員手当:空挺団1尉で月額約9.7万円→10.6万円(9,000円増)
- 特別警備隊員手当:1尉で月額約15.9万円→20.9万円(5万円増)
予備自衛官等の処遇改善
- 予備自衛官手当:年額48,000円→147,600円(99,600円増)
- 訓練招集手当(予備自衛官・年5日):40,500円→55,000円
- 勤続報奨金(即応予備自衛官):120,000円→215,000円(1任期3年)
- 事業を営む予備自衛官への給付金(フリーランスなど)
- 予備自衛官の装具・被服整備に3億円計上
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予備自衛官の訓練を担当した際、旧式の66式鉄帽や64式小銃での射撃訓練を見て、有事には命を守る装備品なので、現役と同様であるべきと感じていたので、装具予算が計上されたのは前向きな施策だと思います。
勤務環境改善の施策
- 既存隊舎居室の個室化(パーテーション間仕切り等):14億円
- 寝具類の整備:26億円
- 自動草刈機の整備:11億円(自衛隊ならでは)
- 空調の優先整備:279億円(隊員の健康影響を考慮)
- 必要な運搬費(高速道路使用料を含む)の計上
- 無線LAN環境の拡充:2億円
- 駐屯地警備リモート監視システム:176億円(警衛勤務の省人化)
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個人的には空調の優先整備(279億円)が興味深いポイント。古い隊舎では夜9時以降に空調が止まり、消灯時でも部屋温度30度超が普通でした。職場で「自衛隊で辛かったことは?」と聞かれて「エアコンなかったこと」と答えたら見事にドン引きされた記憶があります。

駐屯地警備リモート監視システム(176億円)は警衛勤務の省人化につながる良い施策。意外とすぐ回ってくる持ち回り勤務で、訓練と重なると調整が大変なため、現場メリットは大きいはずです。
注目の装備品
共通戦術装輪車
- 24式装輪戦闘車
- 24式機動120mm迫撃砲(迫撃砲搭載型)
- 共通戦術装輪車(偵察戦闘型)
- 96式装輪装甲車(WAPC)の後継 AMV 28両
20式小銃
20式5.56mm小銃の取得に54億円。89式・64式小銃の後継として、陸自だけでなく海自(205丁)・空自(2,702丁)にも配備されます。空自にとっては64式以来の新小銃となるはずで、60年前の装備からの更新は遅すぎたとも言えるでしょう。

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まとめ
- 令和7年度防衛予算は8兆7,005億円と過去最高
- 2022年から3年で1.6倍に拡大、5年で43兆円計画の3年目
- 日本全体予算の約7.5%、米国とは規模が桁違い
- 処遇改善が大きな柱:営内生活者に最大120万円の調整金新設
- 野外演習手当・特殊作戦隊員手当・予備自衛官手当などを大幅増額
- 勤務環境改善で空調整備に279億円・警備リモート化に176億円
- 装備品では共通戦術装輪車、20式小銃の海自・空自配備が注目
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