映画『トップガン マーヴェリック』で「無人化が進めば戦闘機パイロットは不要になる」というセリフがありましたが、現実のアメリカ軍はその方向に大きく舵を切っています。F-47戦闘機(第六世代)と組み合わせて運用される無人戦闘機YFQ-42AとYFQ-44Aの開発が、驚異的なスピードで進行中です。
この記事では、米空軍のCCA(Collaborative Combat Aircraft)プログラムで開発中の2機種、その「機体とソフトを分離して調達する」スマホ的アプローチ、そして「戦闘機パイロットはどう変わるのか」までをわかりやすく解説します。

結論:パイロットが「不要」ではなく「役割が変わる」
- 米空軍はF-47(有人第六世代戦闘機)と無人戦闘機の組み合わせ運用を本気で進めている
- 無人戦闘機開発の枠組みは CCA(Collaborative Combat Aircraft)プログラム
- 現在開発中はジェネラルアトミクス社の YFQ-42A とアンデュリル社の YFQ-44A
- 機体(ハード)とミッションソフトを 分離して調達するマルチベンダー方式を採用
- パイロットは「操縦する人」から「無人機を指揮する人」へ役割が変化する
なぜ米軍は無人戦闘機を必要としているのか
第六世代戦闘機の開発計画では、有人戦闘機と無人戦闘機を組み合わせ、より強力な航空優勢を築くことが想定されています。米軍は2030年代の運用を目指しています。
無人化を進める主な理由は次の3つです。
- 機体コストの大幅削減:有人戦闘機よりはるかに低コストで多くの航空戦力を確保できる
- 運用コストの削減:パイロット育成・訓練・燃料・弾薬などにかかる莫大なコストを圧縮
- 人的損耗リスクの回避:危険な空域に無人機を先行させ、有人機の安全を確保

CCAプログラムとF-47戦闘機の位置付け
米軍にはF-22の後継機を中心とした NGAD(Next Generation Air Dominance) 計画があります。これは、有人の第六世代戦闘機と無人戦闘機を組み合わせた航空優勢構想です。
2025年、第六世代戦闘機開発のサプライヤーにボーイング社が決定し、機体名称は F-47 となりました。「47」には3つの意味が込められているといわれます。
- 第二次世界大戦の戦闘機 P-47サンダーボルトへの敬意
- 米空軍創設の 1947年
- 命名時の 第47代トランプ大統領

F-47とともに運用される予定の無人戦闘機を開発しているのが、CCA(Collaborative Combat Aircraft)プログラムです。現在、2機種が並行して開発されています。

YFQ-42A vs YFQ-44A スペック・開発状況比較
| 項目 | YFQ-42A | YFQ-44A |
|---|---|---|
| 開発企業 | ジェネラルアトミクス | アンデュリル |
| ベース機体 | XQ-67A(実験機) | フューリー(旧ブルーフォーステクノロジー) |
| 正式命名 | 2025年3月 | 2025年3月 |
| 地上試験開始 | 2025年5月 | 2025年5月 |
| 初飛行 | 2025年8月27日 | 2025年10月 |
| 主なミッションソフト | Sidekick(コリンズ・エアロスペース) | Hivemind(Shield AI)/ Lattice(アンデュリル) |
YFQ-42A:無人機の老舗ジェネラルアトミクスが手掛ける機体
YFQ-42Aを開発する ジェネラルアトミクス社 は、長年にわたり無人航空機を開発してきた老舗です。日本でも、海上保安庁が採用している MQ-9Bシーガーディアン で知られており、シーガーディアンは今後、海上自衛隊での採用も決定しています。
YFQ-42Aは、米空軍研究所(AFRL)向けに開発された実験機 XQ-67A をベースに設計されました。

開発スピードは驚異的で、2025年8月の初飛行以降の半年間で複数機が製造・飛行し、ボタン操作のみによる自律的な離着陸にも成功しています。

YFQ-44A:新興防衛テック企業アンデュリルの機体
YFQ-44Aを開発する アンデュリル社 は、2017年創業の新興防衛テック企業です。VR機器Oculus VRを設立した起業家パーマー・ラッキー氏らが立ち上げた、AIや自律システムを得意とする防衛企業です。
特徴的なのは、国の予算成立を待たず自社資金で先行開発を進めるビジネススタイルです。
2025年12月にはアンデュリル社が日本法人を設立。日本の高度な製造技術・エンジニア能力と、アンデュリル社のソフトウェア開発・迅速な生産能力を組み合わせ、強力なパートナー関係を築くと発表しました。今後、自衛隊におけるAI・無人機運用(MUM-T)の開発やAI人材育成において、日本でも影響力を持つことになりそうです。

YFQ-44Aの機体仕様
YFQ-44Aは、もともとブルーフォーステクノロジー社が開発していた無人機 フューリー をベースとした機体です。同社は後にアンデュリル社に買収されました。
| 機体サイズ | F-16戦闘機の約半分 |
| 素材 | 炭素繊維複合材を活用したステルス形状 |
| エンジン | ウィリアムインターナショナル製 FJ44M ターボファン×1基 |
| 運用高度 | 最大50,000フィート |
| 最高速度 | マッハ0.95 |
| 兵装搭載量 | 機体内部に最大400ポンド |
| 拡張性 | レーダー、赤外線追尾、電子戦装置を追加可能なオープンアーキテクチャ |


CCAプログラムの最大の特徴は「戦闘機のスマホ化」
CCAプログラムには、従来の戦闘機開発とは大きく異なる特徴があります。それは、機体(ハードウェア)とミッションソフトウェアを分離して調達するマルチベンダー方式を採用していることです。
スマートフォンに例えるとわかりやすいです。本体はiPhone・Xperiaなど複数のメーカーから選べる一方、その上で動くOSはiOSやAndroidという別レイヤーで存在しています。CCAも同じ考え方で、外側と中身を別々に開発し、組み合わせる仕組みになっています。

A-GRA(自律性政府参照アーキテクチャ)とは
CCAでは、共通の土台規格として A-GRA(Autonomy Government Reference Architecture) が用いられています。これは米空軍が所有・管理するオープンアーキテクチャ規格で、機体制御・通信・他装備との相互運用性を定義しています。
このアプローチには重要な目的があります。従来の軍事開発では、特定企業にシステム全体を依存する「ベンダーロックイン」が大きな課題でした。ハードとソフトを切り離すことで、技術統合の障壁を取り払っています。

実際に搭載されているミッション自律ソフト
各機体には、複数のソフトウェア企業の自律ソフトが搭載・試験されています。
- YFQ-42A × Sidekick(コリンズ・エアロスペース):地上オペレーターからの指示による半自律行動を確認
- YFQ-44A × Hivemind(Shield AI):飛行禁止空域の迂回・障害物回避・交戦判断を人間の介入なしに自律実行
- YFQ-44A × Lattice(アンデュリル):他のアンデュリル製ドローンにも応用可能なミッション自律ソフト
従来の航空機ではソフトを更新するたびに飛行認証テストをやり直す必要があり、これが技術革新の足枷でした。A-GRAはモジュール式を採用し、飛行に関係する変更不可な部分と新機能のための部分を分離することで、リスクを抑えながら開発を加速させています。
さらに、A-GRA自体が特定企業の規格として硬直化しないよう、30社以上の産業共同体を組織して、幅広い企業の能力や視点が反映される仕組みになっています。

「ターミネーター化」しないための米国防省ルール
「将来ターミネーターのような兵器が登場するのでは?」という不安を持つ人もいるかもしれません。実は、米国防省は DoDD 3000.09 というポリシーで、AI・自律型兵器の運用ルールを定めています。
このポリシーをひと言でまとめると、「軍がAIや自律型兵器を開発・運用する際に、人間がどのように関わり、安全と倫理をどう守るべきかを定めた根本ルール」です。
- 人の判断を必ず介入させる
- 誤作動・通信遮断時に意図しない攻撃を避けるためのハード・ソフト開発ガイドライン
- CCAプログラムにもこの規定が適用されている
戦闘機パイロットの役割は「操縦」から「指揮」へ
ここまで見てきたように、米空軍はCCAという枠組みで、有人の第六世代戦闘機を「司令塔」、無人機を「前衛」とする戦い方を本気で進めています。
YFQ-42AとYFQ-44Aは既存ベース機を活用しながら異例のスピードで開発が進んでおり、機体とソフトを分けて調達する“戦闘機のスマホ化”が大きな特徴です。中身を入れ替えて進化させ、ベンダーロックインを避けて、ソフトウェアアップデートで性能を高めていく。これは従来の戦闘機開発とは全く異なるアプローチです。
結論として、戦闘機パイロットが不要になるわけではありません。「操縦する人」から「無人機を指揮する人」へ、役割そのものが変わっていく時代に向かっているのだと思います。
これは将来的に自衛隊にも波及してくる流れです。アンデュリル社の日本法人設立は、日本の防衛装備の自律化・無人化に大きな影響を与える可能性があります。
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まとめ
- 米空軍はCCAプログラムでYFQ-42A(ジェネラルアトミクス)とYFQ-44A(アンデュリル)の2機種を開発中
- F-47戦闘機(第六世代)と組み合わせ、有人機を司令塔・無人機を前衛とする運用を計画
- 機体とソフトウェアを分離するマルチベンダー方式とA-GRA規格でベンダーロックインを回避
- Hivemind・Sidekick・Latticeなど複数のミッション自律ソフトを試験中
- 米国防省はDoDD 3000.09で「人の判断を必ず介入」というルールを定めている
- パイロットの役割は「操縦する人」から「無人機を指揮する人」へ変化していく
本記事の内容はYouTubeでも解説しています。あわせてご覧ください。


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