オーストラリアが開発する自律型無人ステルス戦闘機「MQ-28A ゴーストバット」が、2025年12月にAIM-120 AMRAAMによる空対空ミサイル発射試験に成功し、世界で初めての「自律型コラボレーティブ戦闘機の実戦配備」に最も近い国となりました。
意外にも、米国ではなくオーストラリアが先行しているこの分野。本記事では、ゴーストバットの機体仕様・自律戦闘能力・ロイヤルウイングマン運用構想、そして2028年の作戦能力獲得までを整理します。

結論:オーストラリアは世界初のCCA運用国になる
- MQ-28Aはボーイングオーストラリアが開発中の 自律型無人戦闘機
- 2021年初飛行、2025年3月までに累計100回超のテストフライト実施
- 2025年12月、AIM-120 AMRAAMによる標的機撃墜に成功
- 2028年までに初期作戦能力(IOC)獲得を目指す
- 有人戦闘機の「ロイヤルウイングマン(忠実な僚機)」として運用する構想
ロイヤルウイングマンとは? 無人戦闘機の新しい形
ロイヤルウイングマン(Loyal Wingman)とは、有人戦闘機とともに行動する「忠実な僚機」として機能する自律型無人航空機のことです。コラボレーティブ戦闘機(CCA:Collaborative Combat Aircraft)とも呼ばれます。
現代の戦闘では、ドローンなど無人機の運用が一般化しつつあります。戦闘機を用いた航空戦闘でも無人化の研究開発が進むなか、実戦配備を目前にした国がオーストラリアです。

MQ-28A ゴーストバットとは
MQ-28A「ゴーストバット」は、オーストラリア空軍向けにボーイングオーストラリアが開発中の随伴型無人戦闘機です。オーストラリアにとっては約半世紀ぶりの自国設計・開発航空機であり、国内航空産業復興の象徴ともなっています。
開発コードは当初「Airpower Teaming System(ATS)」と呼ばれ、後にオーストラリア空軍の正式名称が「MQ-28A ゴーストバット」となりました。

名前の由来:ゴーストバット(幽霊コウモリ)
ゴーストバットとは、オーストラリア北部に生息する実在のコウモリです。非常に大きな耳を持ち、視覚と聴覚に優れ、オーストラリアのコウモリで唯一、鳥・昆虫・他の哺乳類を捕食します。
この「集団で生活し、協力して狩りを行う習性」が、有人戦闘機とチームを組み、複数のセンサー・機体が連携して目標を探知・攻撃する本機のコンセプトと重なっています。

MQ-28A 主要スペック
| 全長 | 約12メートル |
| 機体形状 | 胴体側面エアインテーク、無尾翼に近いシルエット |
| エンジン | ターボファン×1基 |
| 最高速度 | 亜音速(有人戦闘機に追従可能) |
| 航続距離 | 3,700km以上 |
| 自律性 | AIによる編隊飛行・状況判断・完全自律飛行対応 |
| モジュール性 | 機首(ノーズ)部を任務ごとに交換可能 |
| ウェポンベイ | ブロック3(将来モデル)で搭載予定 |

開発体制とオーストラリア国内生産拠点
本機はボーイングのオーストラリア部門を中心に、オーストラリア空軍の支援・資金提供を受けて共同開発されています。ボーイングが北米以外に最終組立拠点を設けるのは初の試みであり、同社とオーストラリア政府の力の入れようがうかがえます。
- 生産拠点:クイーンズランド州トゥーンバ近郊 ウェルキャンプ地区
- 航空輸送・鉄道・港湾アクセスを見込める立地
- オーストラリア国内サプライヤーも多数参画
- 先進的なデジタルエンジニアリング・自動ロボット組立で従来比のコスト削減と迅速な開発を実現



初号機は2021年2月に初飛行し、同年中に3機の試験機が初飛行を達成。その後、試作機は契約拡大により6機体制まで増強されています。2028年度までに運用開始を目指しています。
MQ-28Aの技術的特徴:AI自律飛行とモジュール構造
高い自律飛行能力
機首にはAIベースのシステムが搭載され、有人機からのこまやかな指示なしに状況判断・編隊飛行が可能です。パイロットが大まかな指令を与えれば、AIが最適な機動や任務遂行手段を自律選択します。必要に応じて完全自律飛行も可能で、人が操作不能な環境下でも任務継続が期待できます。
ステルス形状とRCS低減設計
全長約12メートルの流線型ボディと内蔵式の兵装・センサー配置により、レーダーなどによる被探知性を低減しています。胴体側面エアインテークの無尾翼に近いシルエットで、レーダー反射面積(RCS)を抑える形状です。
ノーズ交換式のモジュール構造
MQ-28Aは機首(ノーズ)部分をまるごと着脱・交換できるモジュール式を採用しています。任務に応じてセンサーパッケージや兵装ユニットを積み替え可能で、1機種で多彩な任務に対応します。
- 対空戦闘用:レーダー・ミサイル搭載ノーズ
- 対地偵察用:光学センサー搭載ノーズ
- 電子戦用:ジャマー機材搭載ノーズ

システムはオープンアーキテクチャで構築されており、新たなセンサーや通信モジュールの追加、ソフトウェア更新による能力向上が容易に行えます。
武装・通信・センサーネットワーク
内部ウェポンベイには空対空ミサイルや対地攻撃用弾薬を搭載可能とみられます。現段階の試験機(ブロック1・ブロック2)は将来モデル(ブロック3)と異なり、ウェポンベイを搭載していません。今後のブロック3開発では機体の大型化、燃料搭載量増加・航続距離拡大、ウェポンベイ搭載が予定されています。
通信面では、味方の戦闘機やAWACS(早期警戒機)と高速データリンクで連接し、取得した目標情報やレーダー情報をリアルタイム共有します。複数のゴーストバット同士も相互通信し、分散ネットワークを形成することで、広域情報把握や複数点からのレーダー探知によるステルス機探知も期待されます。
運用構想:F-35やE-7Aを支える「忠実な僚機」
MQ-28Aは単独でも運用できますが、特に重視されているのが有人戦闘機の忠実な僚機としての役割です。具体的な運用想定は次の通りです。
- リモートセンサー:F-35やFA-18F戦闘攻撃機の編隊に随伴し、前方で敵脅威を探知・分類して母機に共有
- デコイ/ジャマー:敵防空網に先行侵入してレーダー波を囮受信、電子妨害
- 盾役:必要に応じて敵ミサイルの標的となって母機を守る
- 非戦闘支援機の護衛:E-7Aウェッジテイル(早期警戒管制機)や空中給油機の護衛


有人機ではリスクの高い空域へ無人機を先行させ、損耗を防ぐ狙いがあります。
2025年12月 AIM-120 AMRAAM発射試験成功の意義
2025年12月、ボーイングオーストラリアとオーストラリア空軍は、MQ-28AからAIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを発射し、高速標的機を撃墜することに成功したと発表しました。
この試験では、MQ-28A、E-7Aウェッジテイル管制機、FA-18F戦闘機の3機がそれぞれ別の場所から離陸し、データリンクで連携。手順は次の通りでした。
- MQ-28AはE-7Aのオペレーターが遠隔管制
- FA-18Fが敵役の高速標的を探知・追尾し、編隊内で目標データを共有
- MQ-28Aは自己位置を最適化し、攻撃態勢へ
- 管制オペレーターから交戦許可を受け、MQ-28Aは自律飛行モードのままAMRAAMを発射
- 標的撃墜に成功

高度なAIとネットワーク連携で有人機と無人機が一体となって航空目標を排除できることを示したこの成功は、米中露を含め他国でもまだ公表されておらず、世界初の快挙となる可能性があります。
MQ-28Aゴーストバットは単なるセンサーやデコイにとどまらず、「自ら戦う無人戦闘機」としての実力を実証したことになります。
2028年 IOC獲得と同盟国への展開可能性
MQ-28Aは着実に開発マイルストーンを達成しており、オーストラリア空軍は2028年頃までに初期作戦能力(IOC)を獲得し、世界で初めて実戦型コラボレーティブ戦闘機(CCA)の運用国になる見通しです。
- 初期ロット6機配備後、有人機1機あたり複数の無人機を従える編成を試験
- 将来的にはF-35など1機につきゴーストバット2〜4機という編隊も検討
- ボーイングは「市場次第で米国など海外でも生産する可能性」を示唆
- 同盟国への輸出・共同運用の可能性あり


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まとめ
- MQ-28A ゴーストバットはオーストラリアが開発する自律型無人ステルス戦闘機
- オーストラリアにとって約50年ぶりの自国設計・開発航空機
- AI自律飛行・モジュール式ノーズ・ネットワーク戦闘対応が特徴
- F-35やE-7Aのロイヤルウイングマンとして運用構想
- 2025年12月、AIM-120 AMRAAM空対空ミサイル発射試験に成功
- 2028年に初期作戦能力(IOC)獲得を目指し、世界初のCCA運用国になる見通し
本記事の内容はYouTubeでも解説しています。あわせてご覧ください。



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