海上保安庁は無人航空機 MQ-9Bシーガーディアン を運用しており、令和8年度予算で9機体制へ増強する方針を発表しました。さらに海上自衛隊も同型を最大23機導入する計画を示しており、海保・海自ともにシーガーディアンが海洋監視の主力UAVとなる見通しです。
この記事では、MQ-9Bシーガーディアンの機体スペック・海保での導入経緯・運用拠点の移転・9機体制への拡充、そして海自による23機導入計画までを整理します。

結論:海保は9機体制へ、海自も最大23機導入計画
- 海保のシーガーディアンは現3機→令和10年度以降9機体制へ拡充
- 海自も最大23機を鹿屋・八戸基地に約10機ずつ配備予定
- 海自は令和9年度から鹿屋で2機運用開始、当初は民間企業がアウトソース運用
- 海保の運用拠点は八戸→北九州航空基地へ移転(2025年1月〜試験運用)
- 令和8年度海保概算要求は約3,177億円(前年度比1.14倍、過去最高)
MQ-9Bシーガーディアンとは
MQ-9Bシーガーディアンは、米ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ社(GA-ASI)が製造する無人機で、もともとはMQ-9Aリーパー無人攻撃機の海上監視派生型です。
MQ-9ファミリーの系譜
MQ-9シリーズは、1995年から米空軍で運用されていた MQ-1プレデター の後継として開発されました。

- エンジン強化で巡航速度が 時速約300km以上(プレデターの約3倍)
- 航続距離も大幅に延伸、長距離・長時間任務が可能に
- 主翼に6つのハードポイント(兵装搭載箇所)
- 対戦車ミサイル・レーザー誘導爆弾・空対空ミサイルなど柔軟な兵装搭載
- 強化されたレーダー・センサー類で多様な戦術に対応

海洋監視特化型「MQ-9B」
MQ-9Bシーガーディアンは海洋監視任務に特化したMQ-9Aの兄弟機で、民間空域での運用にも配慮した設計となっています。
| メインレーダー | レイセオン社製 SeaVue XMC(機体下部) |
| センサー | EO/IR(可視光・赤外線)カメラ |
| 船舶識別 | AIS 自動船舶識別装置 |
| 航続性能 | 衛星通信を介して 30時間以上の長時間飛行 |
| 任務適性 | あらゆる天候下で海上・地上目標の細部識別が可能 |
海保運用機には装備されていませんが、MQ-9Bは対潜水艦戦も考慮されており、ソノブイディスペンサー(SDS)ポッドとソノブイ監視システム(SMCS)を搭載することで、潜水艦監視任務にも使えます。

海上保安庁の導入経緯(2016〜2022)
海上保安庁は、2016年採択の「海上保安体制強化に関する方針」に沿って、新技術による海上監視能力強化の一環としてMQ-9Bの導入検討を開始しました。

2020年の実証試験
2020年、合計13回・約147時間の飛行による実証試験が実施され、次の点が確認されました。
- 24時間以上の長時間飛行が可能
- 有人機と同等以上の監視能力
- 衛星を介した繊細な機体コントロール
- 厳重な妨害対策による安定運用
- 自動衝突防止装置による他航空機との衝突回避


結果としてシーガーディアンは海上保安業務をより効果的・効率的に遂行可能と結論づけられました。
2022年10月 正式運用開始
海上保安庁では「無操縦者航空機」という名称で2022年10月から正式運用を開始。青森県の海上自衛隊八戸航空基地に運用拠点が置かれました。
- 当初はリース契約で調達
- 操縦・整備はGA-ASI社にアウトソース(社員が来日滞在)
- オペレーションセンターは八戸基地第一格納庫に設置
- GA-ASIのパイロット・センサーオペレーターが操縦、海保の「運用官」がミッションを指示
2023年5月 3機体制で24時間365日監視へ
2023年5月には3機体制での運用が開始され、24時間365日の海洋監視が可能となりました。当初リース契約だった機体は後に購入契約となり、現在は海上保安庁の所有です。
運用拠点の移転:八戸から北九州航空基地へ
海上自衛隊八戸航空基地の建物・敷地使用期限が2025年3月に終了することに伴い、運用拠点が福岡県の海保北九州航空基地へ移転することが決定されました。
- 2025年1月31日から北九州空港での運用試験開始
- 2025年10月以降、さらに2機を追加導入
- 複数海域の常時監視体制に拡充

防衛省もシーガーディアン最大23機導入へ
防衛省の令和8年度概算要求では、滞空型UAVとしてMQ-9Bシーガーディアン4機の取得費用が掲載されました。

防衛省は令和5年5月〜令和6年9月にかけて八戸・鹿屋航空基地でシーガーディアンの試験的運用を実施し、滞空型UAVとして正式に機種選定を完了しています。
- 最終的な導入予定は 計23機
- 配備基地は鹿屋・八戸(既存のP-1哨戒機運用基地)
- シーガーディアン導入に伴い、P-1哨戒機の取得数は見直し
- 令和9年度から鹿屋で2機運用開始、当初は民間企業による飛行運用
- 翌年度から海上自衛隊単独運用へ移行
- 最終的に約10機ずつを鹿屋・八戸に配備
- 人員は現航空機部隊を充当、海自隊員の増減なし

海自の運用立ち上げには、海保の八戸での運用実績やGA-ASIの日本アウトソーシング実績が活かされそうです。
令和8年度 海保概算要求 約3,177億円 過去最高
2025年8月発表の海保概算要求では、令和10年度以降に4機を追加して合計9機体制の無人機監視体制を整備する方針が示されました。

- 概算要求総額:約3,177億円(前年度比1.14倍、過去最高)
- 2022年「海上保安能力強化に関する方針」に基づく
- 尖閣周辺海域・大和堆周辺など厳しさを増す情勢への対応
予算の主な内容
- 中国海警船の大型化・武装化に対応する大型巡視船の導入
- 無操縦者航空機 + 中型ジェット機の導入
- 衛星・AIなど新技術を活用した情報分析体制の強化
- 海外海上保安機関との連携強化、自衛隊との秘匿通信確立
- 老朽化した船舶・航空機の計画的代替整備、基地整備、サイバーセキュリティ
- 291人の定員増加要求、処遇改善・勤務環境改善への取り組み
海上保安庁も自衛隊と同じく、人材確保難・離職増加が課題となっており、概算要求資料では処遇改善や勤務環境改善の部分が画像や図を用いて強調されている印象です。
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まとめ
- 海保のMQ-9Bシーガーディアンは現3機→9機体制へ拡充(令和10年度以降)
- 運用拠点は八戸航空基地から北九州航空基地へ移転
- 海自も滞空型UAVとしてシーガーディアンを最大23機導入、鹿屋・八戸に約10機ずつ配備
- 海自は当初民間企業による飛行運用からスタート、海保の実績を活用
- 令和8年度海保概算要求は約3,177億円、過去最高
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