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台湾 漢光41号演習 民間人も参加する全社会防衛を解説

ミリタリー

台湾軍が毎年実施する総合軍事演習 「漢光演習」。2025年の41回目は過去最長の 10日間にわたり、陸海空の軍だけでなく 予備役・警察・消防・地方自治体・民間人まで巻き込んだ全社会的な演習となりました。

この記事では、漢光41号演習の特徴・中国軍侵攻シナリオの段階的訓練内容・新設された「都市レジリエンス演習」・民間企業や交通機関の参加までを整理します。

結論:「全社会防衛レジリエンス」を本気で検証

  • 2025年漢光41号は 7月9日〜18日の10日間、過去最長
  • 事前にシナリオを知らせない予測不能演習を採用
  • グレーゾーン事態・サイバー・電子戦を新たに組み込み
  • 市街戦訓練を本格化、台北など都市部で縦深防御を演練
  • 新設の「都市レジリエンス演習」で全22県市が一斉参加
  • スーパー「全聯」、MRT地下鉄など民間企業・公共交通も参加
  • 不参加には最大15万台湾ドル(約650万円)の罰金

漢光41号演習の3つの新しい特徴

① 過去最長の10日間と予測不能演習

漢光演習はこれまで通常5日間でしたが、2025年は 7月9日から18日までの10日間 実施。進め方も従来と異なり、訓練を受ける側にシナリオは知らされず、予測不能な状況に現場指揮官が即応する方式が採用されました。

② グレーゾーン事態・サイバー・電子戦への対応

敵国民兵船の領海挑発、無人機による偵察飛行、通信・指揮系統へのサイバー攻撃など、戦争未満の「グレーゾーン事態」への対処が新たな要素として組み込まれました。

グレーゾーン事態

これは実際の台湾海峡で日常的に起きている事態を、そのまま訓練に反映させたものです。

③ 市街戦訓練の本格化

これまで台湾軍は沿岸防衛や上陸阻止を中心に演習してきましたが、2025年は「もし敵が市街地に侵入したらどうするか」という最悪の事態を想定しました。警察や地方自治体の対応、民間人の避難方法も訓練対象となり、台湾社会全体での抵抗戦術がリアルに検証されました。

中国軍侵攻シナリオに沿った段階別訓練

初期段階:グレーゾーン事態への対応

中国の海上民兵船・海警艦艇による台湾沿岸での嫌がらせや領海侵入、無人機による偵察・撹乱行為など、中強度の侵擾を想定しました。

  • 台湾海軍:各種艦艇に戦備補給を完了させて緊急出港、港湾で奇襲を避ける
  • 空軍:移動式レーダー・地対空ミサイル部隊を戦術陣地へ機動展開
  • 陸軍:沿岸・要衝に前進配置
  • 発電所・石油タンク・給水施設など重要インフラの警備強化
  • 工兵:上陸されやすい海岸に障害を設置して揚陸妨害
戦闘機スクランブル

中盤:ミサイル攻撃と上陸作戦の阻止

敵が台湾周辺で攻撃準備のための演習・示威行動を開始し、台湾本土へミサイル・空爆による統合火力打撃を加える想定が盛り込まれました。

  • 7月12日:中国軍が台湾近海で「演習」と称した威嚇行動 → 台湾軍は警戒態勢強化
  • 7月13日:敵軍が台湾各地の軍事目標・インフラにミサイル一斉攻撃→上陸作戦開始
  • 台湾国軍:防空ミサイルによる迎撃、戦闘機の緊急発進で初撃を低減
  • 敵輸送船団・上陸用舟艇を洋上で可能な限り阻止
  • 事前敷設した機雷原・沿岸砲兵で被害を与え、海兵隊・機甲部隊で殲滅戦

7月14日未明には、台北港近くの淡水河河口で敵特殊部隊侵入を阻止するため、爆薬を搭載した浮橋を設置する工兵演習も行われました。

河口での実爆演習

後半:市街地での縦深防御と持久戦

演習後半では、敵の一部が上陸突破に成功した前提で島内での本格戦闘が演じられました。

  • 7月14日:台湾本島各地で上陸侵攻部隊との戦闘、都市近郊で防衛戦
  • 7月15〜16日:敵軍が首都台北を含む都市部深部へ侵攻、縦深防御戦術で持久戦へ
  • トンネル・橋梁・工場地帯など地形を利用した防御線構築
  • 橋梁・道路上に障害物を設置、周囲の高層建物から三方向から敵を包囲
市街戦訓練(MP)
市街戦部隊

軍民連携による縦深防衛戦では、各地の地方自治体や民間資源も動員され、住民避難誘導や後方支援(物資配給・傷病者救護など)が並行して実施されました。7月17〜18日には、敵軍が増援を投入する状況を想定し、国軍と民間防衛組織が協同で長期抗戦にあたるシミュレーションで演習を締めくくりました。

新設「都市レジリエンス演習」:全22県市が一斉参加

今年から新設された「都市レジリエンス演習」は、内政部(日本の総務省に相当)および各地方政府が主導する民間防衛訓練で、漢光演習と連動して実施されました。従来の「万安演習」(防空避難)「民安演習」(防災・民防)を統合・再編したものです。

全22都市での防空避難訓練

  • 全22都市(台湾本島・離島)で 30分間の防空警報訓練 を地域別に実施
  • 警報解除後、1時間の救援訓練(避難住民収容・救護所設営・応急手当・瓦礫救助)
  • 民間人だけでなく政府機関・学校・企業・工場も一斉参加
  • 時間中の移動や作業を停止し、避難手順に従うことが義務化
  • 不参加・規則違反には3万〜15万台湾ドル(約130〜650万円)の罰金
住民の避難訓練

中央政府による即興的な課題提起

内閣の全社会防衛レジリエンス委員会の季連成 政務委員(元陸軍中将)は全ての演習現場に赴き、地方政府職員に対して想定外の状況を即興で問い質しました。

たとえば水道水源施設破壊の対応訓練中、季委員はその場で 「では病院が攻撃されたら負傷者はどこへ搬送するのか?」 と質問し、当初想定にない事態への回答を地方官に求めました。中央と地方が連携し、その場で課題を抽出・改善策を議論するプロセスを通じて、全社会的防衛力の向上が図られました。

都市レジリエンス演習の指導

地域ごとの多彩なシナリオ

各地方自治体は自地域の地形・産業・人口構造に合わせた多彩なシナリオを企画しました。

都市シナリオ
新竹市科学園区で火災・化学物質漏洩、超高圧変電所破壊による停電
基隆市北部沿岸の水源地・浄水場に敵工作員が侵入し破壊工作
嘉義市ダムがミサイル攻撃で決壊し大規模洪水
ダム復旧訓練

これらのシナリオには消防局・警察局・上下水道事業体・病院など関係機関が総動員され、軍が前線で戦う間に「背後を守る」役割が確認されました。

民間企業・公共交通機関も参加

  • 大手スーパー「全聯(PX Mart)」:全国3店舗を訓練会場とし、買い物客・店員が一斉に店内地下シェルターへ避難する模擬空襲訓練
  • 台北捷運(MRT地下鉄):演習に連動した避難誘導・駅施設の防護訓練に参加、戦時下での公共交通機能維持
地下鉄部隊の訓練

このように官民の幅広い組織が参加したことで、演習は単なる軍事訓練を超えた「民間防衛」訓練としての性格を帯びました。

「国家団結月」と全民国防意識の向上

台湾政府は2025年から毎年7月を「国家団結月」と定め、国民の防衛意識向上を呼びかけています。

賴清徳総統は演習前に台中市の砲兵部隊を視察し、「国軍の重点は勝つことだけでなく、全社会が一体となって防衛レジリエンスを築くことだ」と激励するビデオメッセージを録画。国軍内部教育番組で放映され、軍人だけでなく国民全体に団結と備えを呼びかけました。

演習シナリオには「中国からの内部協力者の潜入」「偽情報による住民扇動(投降を呼びかける放送)」などの心理戦・認知戦も盛り込まれ、地方政府職員から住民まで「戦時下の生存術」を真剣に考える機会となりました。

演習中、台北市では愛国者ミサイル部隊の車両が誤って駐車中の車に接触する事故が起きましたが、「訓練のリアリティを高めるためにはやむを得ない」と理解する声もあり、大きな社会問題とはなりませんでした。専門家からは「初年度の試みで不十分な点もあるが、官民問わずレジリエンスの重要性を認識し始めたこと自体が進歩だ」と評価されています。

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まとめ

  • 漢光41号演習は過去最長10日間、予測不能演習方式を採用
  • グレーゾーン・サイバー・電子戦を新たに組み込み、市街戦を本格化
  • 新設「都市レジリエンス演習」で全22県市が一斉参加、不参加に罰金
  • 全聯スーパー・MRT地下鉄など民間企業・公共交通機関も参加
  • 毎年7月を「国家団結月」と定め、国家全体で防衛意識を向上
  • 軍・警察・消防・自治体・民間企業・住民が一体となった「全社会防衛レジリエンス」を本気で検証

本記事の内容はYouTubeでも解説しています。あわせてご覧ください。

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